Description: 没後60年『ジャン・コクトー映画祭』公式サイト
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ジャン・コクトーの『美女と野獣』は、私が見たはじめてのフランス映画だった。あまりの美しさに目がくらんだ。フィルムそのものがきらめき、かがやいているように見えた。
美女の涙の滴がダイヤモンドになってこぼれ落ちる。歌舞伎の鏡獅子にヒントを得たという野獣のメークが仮面ではないことにおどろく。暗い魔法の森を抜けて白馬が美女を乗せて野獣の館にみちびく。白い大きなカーテンがゆらめき、はためく長い廊下をすべるように音もなく美女が進んでくる。「私はあなたのドアです」とドアが人間の言葉で挨拶をして、ひとりでに開き、美女を迎え入れる。鏡もやさしく美女に語りかける──「私はあなたの鏡です。美女よ、あなたの考えていることを映して見せましょう」。