hitohito.jp - 映画『ヨコハマメリー』公式サイト

Description: 映画『ヨコハマメリー』人生の深みと温かさが、心をゆるがす感動の物語。

映画 (1739) ヨコハマメリー (2)

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歌舞伎役者のように顔を白く塗り、貴族のようなドレスに身を包んだ老婆が、ひっそりと横浜の街角に立っていた。本名も年齢すらも明かさず、戦後50年間、娼婦として生き方を貫いたひとりの女。かつて絶世の美人娼婦として名を馳せた、その気品ある立ち振る舞いは、いつしか横浜の街の風景の一部ともなっていた。“ハマのメリーさん”人々は彼女をそう読んだ。

1995年冬、メリーさんが忽然と姿を消した。自分からは何も語ろうとしなかった彼女を置き去りにして、膨らんでいく噂話。いつの間にかメリーさんは都市伝説のヒロインとなっていった。 そんなメリーさんを温かく見守り続けていた人たちもいた。病に冒され、余命いくばくもないシャンソン歌手・永登元次郎さんもその一人だった。消えてしまったメリーさんとの想い出を語るうちに、元次郎さんは一つの思いを募らせていく。もう一度、メリーさんに会いたい。そして彼女の前で歌いたい。

「天国と地獄ね……」。ある時、メリーさんがそう呟いた。横浜の小高い丘に広がる富裕層が住む山手と、その麓にひしめく浮浪者街、そんな対極の地を見たときのことである。 映画「天国と地獄」の舞台となった横浜には、数十年経った現在でもそんな世界が現存している。「天国と地獄」の中に登場する「外人バー」。そのモデルとなった酒場が、戦後、進駐軍の米兵や外国船の船乗りたちで賑わった大衆酒場「根岸家」である。客は外人たち、やくざや愚連隊、街の不良たち、米兵相手の娼婦「パンパン」、果ては警察官といった面々。皆、無国籍感漂う酒場「根岸家」に集まり、夜な夜な饗宴を繰り広げていた。その当時、メリーさんは「パンパン」として根岸家に出入りし、ライバルたちと熱いバトルを繰り広げていたという。 横浜がまだアメリカだったころ、そして横浜がもっとも横浜らしかったころの話である。